居合は「鞘の内」

◆居合は「鞘の内」と呼ばれる。

居合の勝ちは鞘の内にある。すなわち、抜かぬ前に吾が心法の利をもって敵の心を制圧し、技の起こりを封じ、体の働きを奪い取る。それでもなお敵、害意を失わず切り懸けくるや、鞘離れの一刀、剣光一閃のうちにこれをたおすのが、居合の大精神である。

孫子の「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり、戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」の理に通じるもので、居合の秘歌に、「居合とは人に切られず人切らず只受けとめて平らかに勝つ」とあるのも、この精神を詠みこんだものと解される。とは、紙本榮一編著「初伝 大森流」に解説する。

◆居合の精神を受け止め、修行の過程で、これを実感できるだろうか・・・道は遠い。

◆心法に始まり、抜刀に中し、心法に終わるのが居合である。・・・心法といえば、直ちに想起されることの一つに、沢庵禅師の「不動智」に述べられている所見があるという。

◆古の兵法に、勝利に三通りあると述べている。

1.争いに勝は、勝ちの下なり、

2.勝って争うは、勝ちの中なり、

3.争わずして勝は、勝の上なり、と。