剣道・居合道の審査会における寸評 2024年

剣道・居合道の審査会における寸評

全日本剣道連盟「剣総」2024年6月号より引く

◆剣道八段審査について

実施日:2024年5月1日・2日 京都市体育館

受審者:1720名 (合格者14名)

今回も合格率0.8%という厳しい審査結果であった。

 

☆審査で有効打突につながらない原因はについて、石塚先生は以下のように述べられている。

  • 「打突の好機について」

先を取って相手を崩して打突の好機を創る事が重要。虚と実を見極め打突する。「当てる・打つ」の違いを再認識してもらいたい。

2.「溜めについて」

攻防は遠間で行う。気あたりの責め合いもなく、すぐに一足一刀の間合いに入るから、理合も溜めも無く審査員の心に響く打ち切った打突にならない。相手と対峙し優劣を決めるには「溜め」を創り位取り「気位」して水準の高い剣道を修練する心構えが大切である。

3.「乗った姿勢について」

 懸中待・待中懸の教えの如く、足捌き体捌き等を駆使して、居着かずに打突出来る事が肝要だと思う。腹構えを創り腰で打つ基本を工夫してもらいたい。

 

居合道八段審査について

実施日:2024年5月3日 京都市武道センター

受審者:106名 (合格者4名)

居合道の八段審査も、合格率3.8%の狭き門。

 

☆小倉先生の寸評は次の通り。

多くの方が対敵がなく形を抜かれていた。これは稽古方法に問題があるにではないでしょうか。形は出来て当たり前で、大切なのはその形に命を吹き込むことです。今、敵はどのように自分に加えようとしているのか。その剣理を追求することです。敵がいてこその居合ですから、自身が敵と対峙したときどうするかを研究することです。

それにはまず、

・敵を逃がさない鋭い「目付」

・隙のない「上虚下実」の居合い腰

・油断のない「目前心後」の歩き方、そして

・その体勢からの「体捌き」と「刀法の手の内」

・「抜き付け」と「抜き打ち」の刀法の違い

・抜くままでの「三構え」と抜く時の「三攻め」

・居合の「中心生命」である「初太刀」を磨く。

など常に原点に戻る事を心して修練してください。

 形だけの稽古は、いくらやっても形には慣れるが、進歩・進化には繋がらないとの教えを心に基本の重要性を重視し、本物の技を身につける事が大切です。

 

◆剣道の「攻め」、居合道の「形に命を吹き込む」事の重要性を説かれた。

 

剣の理法について

「剣の理法」について

全日本剣道連盟はこのたび、剣道の理念の中核である「剣の理法」について、全日本剣道連盟の考えを明示した。

                     「剣 総」6月号 令和6年(2024)

 

『剣の理法説明版』 (3月5日)

《本文》

「『剣の理法』とは、気剣体一致した打突を生み出すために心法・刀法・身法を一体としてはたらかせる理にかなった方法のことである。」

《補足》

「気剣体一致した打突は、心法(心のはたらき)と刀法(刃筋・物打・鎬などが機能する刀・木刀・竹刀の適正な操作)と身法(体勢・体さばきなどの身体の運用)とが一体となっているものである」

 

 全日本剣道連盟 普及委員会は、「剣の理法説明版」(剣の理法とは)の完成に伴い、令和6年4月の剣道中央講習会を皮切りに、今後は積極的に国内外に向けた案内・説明を推し進める予定です。

 「剣の理法説明版」は、全剣道人が「剣道の理念」の理解を深めるための一助として、「剣道の理念」の中核である「剣の理法」について全日本剣道連盟の考えを明示したものであります。

 

 「剣の理法説明版」は《本文》と《補足》から構成され、《本文》では「剣の理法」を定義し、《補足》では心法・刀法・身法を説明する基本的な用語を一例として、それぞれ(  )内に示しました。

 「剣の理法説明版」は簡潔な文章とし、主な対象者を4~5段クラスの若手指導者及び指導経験の浅い指導者として検討してきましたが、全剣道人にも十分活用可能なものとなっています。

 指導の現場では、指導は指導者の裁量に任せるものとし、指導者自身の剣道観・技量・指導経験や指導力などを付加して、《補足》に示されている心法・刀法・身法、それぞれの(  )内に、受講者・習技者のレベルに適した用語・内容を用いて説明することが極めて重要と考えています。

 「剣の理法説明版」が正しい指導の手掛かりとして広く活用されることを期待しています。

 

 

居合道八段・七段審査会寸評2023

居合道八段審査・審査員の寸評 全剣連「剣総」2024,1月号掲載

(2023,12,9実施、江戸川スポーツセンター)

 八段審査には、受審者の受審態度に修行の深さを感じさせることが必要だと思います。

 審査に当たって、解説書の基本(礼法・作法)、要義と動作の理合が充分に理解されているかを見させて頂きました。仮想を実想として(理合のある)演武をされていない方が見受けられたことは残念に思いました。

 最高位の八段として、居合道称号段位審査実施要領の「段位審査の方法」一項の一号、二号を修得し、二項の理合・風格・品位に繋がるように、日々、稽古を積み重ねることが二項の理合・風格・品位を生み出すことになると言われています。

 鞘の内で気攻め・体攻め・やむを得ず鞘放れをすれば、剣の攻めと冴え(激しい抜きつけ・切り下し)、その後の残心を最後まで維持継続することが大切であります。

 技の錬度(修行の深さ)が自然に表現されれば、目標達成に繋がるのではないでしょうか。

 

 

 居合道七・六段審査・審査員の寸評 全剣連「剣総」2024,1月号掲載

(2023,12,10実施、江戸川スポーツセンター)指定技6本

 演武の心得として、充実した気勢、正確な刀法、適法な姿勢(気・剣・体の一致)を心がけ、真剣勝負の心境で行ずる心がけが大切とあります。これらを基に各技の留意点を含め審査に臨みました。

・一本目 前 抜きつけ後の振りかぶりは受け流しではなく小指を緩めず、しっかり後ろを突く気持ちで振りかぶり、切っ先が水平より下がっていないか?血振りの切っ先は45度前下がりとなっているか?

・三本目 受け流し 受け流しから袈裟に切り下ろす動作が一連の動きとなっているか?

・五本目 袈裟切り 逆袈裟に切り上げたとき、しっかり切り上げて刀を返しているか?

・九本目 添え手突き 右袈裟に抜き打ちした時、右こぶしがへその高さとなり、切っ先は右こぶしよりわずかに上がっているか?

・十本目 四方切り 柄当ては強く柄の平で打っているか?敵の水月を突き刺した後、右斜め前の敵に振り向き刀を引き抜くとき剣先が先に上がっていないか?

・十一本目 総切り 敵の左斜め面、次に右肩、さらに左胴を切り下ろす時、頭上から切り下ろす角度と切り下ろした位置が正確であるか?

 以上が審査の中で特に気になった点です。

剣道八段、七段審査会寸評2023

剣道八段審査・審査員の寸評  全剣連「剣総」2024,1月号掲載

(2023,11,21実施、日本武道館

 審査では段位付与基準に相応しい内容があるか、充分な稽古をされているか、的確な技を身につけているか等、総合的に判断されます。しかし、実技審査では次のような問題点が散見されました。着装、構え、姿勢が悪く、礼法、所作が身についていない、打突については、正中線を攻めていない、上半身が力んでいる、捨てきっていない、踏み込みが弱い、気剣体が一致していない、といった打突が目立ちましたので、今後の課題としてください。

気で攻めて、理で打つ(一刀流の訓え)、肚で打つ。苦しくなって出るところ、退くところ、打ちの尽きるところを身も心も捨て切って打突をする。立ち会ったら、「さあどこからでも来い」という気持ちを持ち相手の動きに反応しないことが大切です。若い時は技を学び、壮年は気を養う、高年は風格を養うと言われています。最後になりますが、剣の理法に基づき竹刀を通じて尚一層自己を磨き、剣風を高められ、次回の審査に立たれることを期待します。

 

 

 剣道七・六段審査会・寸評      全剣連「剣総」2024,1月号掲載

(2023,11,16実施、八王子)

 審査会当日の着装・所作事については指摘することも少なく、特に問題はなかったと思います。ただ、立合い開始から終了までについて、

1.立ち上がると同時に互いに「やあやあ」と発声している人が多かった。
 ケースバイケースとは思いますが、私は相手が発生した数秒置いて発声しています。その方が格上に見える気がするからです。

2.打ち切る打突が少なかった。
 打突を決めたとしても、打ち切っておらず評価を得ることが出来ない、あるいは評価が下がることになった、こんな損なことはないと思います。

3.一本技(単発)の打突が多かった。
 打ち切ることと連動すると思いますが、気持ちは切らずに初打ち、初打ち、初打ちの繰り返しで打突を決めきる。

 以上、3点が気になりました。

 これらを改善する為の稽古法について簡単に紹介します。
〇準備運動は必ず実施
〇素振りは空気を切る音(ブシュ)を感じること。
〇技の稽古については
ア、一足一刀の間合よりも近間から左足を継がないで一拍子(調子)の打突(上げ下ろしを素早く)
イ、竹刀が触れない間合から一歩攻めて打突
ウ、出端技の修得、最初は相対動作で実施

 以上、所感を述べました。最後に稽古は嘘をつかない、ご指導いただいている先生、自分を信じて頑張ってください。皆様のご活躍を期待しています。

 

 

2023剣道審査会寸評

                全剣連「剣窓」2023,10月号より

◆剣道八段

2023,8月12日・13日

受審者:1123名

合格者:7名

合格率:0,6%と厳しい合格率だった。

岡田先生の寸評:剣道八段に求められるのは、最高段位に相応しい気・剣・体一致と品位・風格です。

立会いで配慮すべきことは、

○攻め崩して、機会を捉えた打突

○打突の瞬間におけるスピードと強さによる、冴えのある打突

○高齢者の方においては、手打ちにならず足腰で打ち切る打突

剣道七・六段審査会寸評

剣道審査会の結果について、「剣 窓」令和5年7月号に掲載されたので、その内容を転載した。これからの稽古に活かしたいと思う。

 

剣道七・六段(愛知)審査会 

2023,5,13 名古屋市枇杷島スポーツセンター

七段合格率 18.7%(受審者878名、合格者164名)

六段合格率 26.9%(受審者836名、合格者225名)

 

◆審査員の寸評(抜粋)

・着装を整えた受審者の立会い前から充実した気勢で望む緊張感が伝わってきた。

・年齢層の若い受審者の力強い打突に石火の勢いが多く感じられた。

・女性や高齢者の方の立会いでは、円熟した経験を表すかの如くしなやかで、鎬を使った攻め合いも見られた。

・攻めの勢いを感じられる方たちの左脚に注目した。膕の適度な緊張と緩み、何時でも打突に転じられる構えと、左手の納まり、素晴らしい方が大勢見られた。

・勢いを感じる立会いは正しい姿勢、充実した気勢があり、剣道試合の有効打突の要件を満たし、打突後の余韻すら感じるものだと思いました。

・このような立会いが多く見られた反面、仕掛ける技も、相手を引き出し応じていく技も不十分なままの方もおられました。

 

※充実した気勢で「攻める・ためる・打ち切る」の一連の動作を身につけたいものである。