抜きつけ

抜きつけの一刀には、居合の生命がかかっているといわれる。心気充実、必殺の鋭さがなければならない。
剣道日本居合道虎の巻」の「鞘放れと鞘引き」の解説次のごとし。鯉口を切った刀が物打ち近くなったときに水平に刀を倒す。左手で鞘を引き、右手の小指を強く締めながら、右足を踏み込んで、相手のこめかみに抜きつける。・・・鞘ばなれの一瞬は、ゆっくり抜き出した刀が限界に来たとき、すなわち、刀の「横手」あたりが鯉口にきた瞬間に、左手で思いきり鞘引きすることで決まる。鞘ばなれの一瞬の働きは、左手70%、右手30%といわれている。

全剣連居合の教本は、一本目「前」動作を次のごとく説く。正面に向かって正座する。静かに刀に両手をかけて鯉口を切り、腰を上げながら刃を上にしたまま「鞘引き」とともに刀を抜きだし、両つま先を立てて鞘を左へかえし始め、「鞘放れ」寸前に刃を水平にし、腰を伸ばして右足を「踏み込む」と同時に敵の「こめかみ」めがけて激しく「抜きつける」。とある。

◆檀崎範士の「居合道教本」の「初発刀」の解説次の通り。正面に向かって正座し、充分心気を充実し、静かに刀に両手をかけると同時に臀部を上げ、両足の爪先を立てて刀刃を上向きのまま、静かに弛みなく抜きだし、剣先九糎位の所より刃を横外にして急激に右足を前に踏み出すと同時に、敵の顔面に抜きつける。これと同時に左手の引手を十分にきかす。

上記の解説の内容は、ほぼ同様であるといえる。

◆ところで、抜きつけの要領については、実践として次のような動作が効果的である、とも学習した。すなわち、
正座して、鯉口を切り、さらにわずかに刀を抜きだす。腰を上げながら、刃を横にしつつ鞘引きとともに抜きだし、左足つま先を立て、右足を前に出しながら、鞘ばなれと同時に思いきり左手で鞘引きする。鞘は抜きつけ直前までは腰まで引かないで、余裕を持たせたほうがよい。・・・鞘引きでの刀の刃の向き、足の踏み方、鞘の引き方等、解説を考慮し、よくよく研究すべき課題である。