剣道形考

現代剣道でもっとも憂うべきことは、試合の勝敗にこだわりすぎて剣道の本質がうとんぜられていることである、との風評を聞く。剣道の基本を正しく身に付けるためには、剣道形を合わせて修練することが大切であると説く識者も多い。
しかしながら、多くの稽古の現場を見ても、剣道形の稽古に出合うのは稀である。

剣道形の効果について、高野佐三郎先生はその著「剣道」で次のように詳述している。
「剣道の形は剣道の技術中最も基本的なるものを選んで組み立てたものであり、剣技の最も基本的で大切な理合いを示し、術技の原理原則ともいえる。
これにより、姿勢を正確にし、眼を明らかにし、技癖を去り、太刀筋を正しくし、動作を機敏軽捷にし、刺撃を正確にし、間合いを知り、気位を高め、気合を練る等甚だ重要なるものなり。
また、形を演ずるに当たりては充分に真剣対敵の気合を込め、寸毫の油断なく、一呼吸と雖も苟もせず、剣道の法則に従い確実に演練すべし」とも。

形稽古は単にその動作のみならず気合充実、理合を考えながら行ずることが欠かせない要件といえよう。