藤平式呼吸法に学ぶ

 

呼吸法は剣道の極意である、と先達は言う。合気道名人の藤平光一氏の説く呼吸法に興味を持ち、実践してみたいと思っている。剣道・居合道の上達に向けて。

以下、藤平光一氏の呼吸法訓練の方法である。

 

呼吸法の極意

「出る息は天地(てんち)万世(よろずよ)に及び、吸う息は腹内の寸分の内におさまる」

これが呼吸法の極意である。出づる息、吐く息は天地いっぱいに広がっていくつもりで吐き、吸う息は腹内の無限小の一点におさめるつもりで吸う。腹内の一点は臍下だが、一般に言う臍下丹田とは違う。無限小でありながらゼロではない一点である。

★具体的な方法を説明しておこう。

正座して足の両親指が重なるようにする。両膝の感覚はちょうどこぶしが二つくらい入る程度に開く。両手は腿の上に乗せる。
 背筋を伸ばし、齊下の一点に心をしずめ、全身の力を抜く。前に書いた「天地の正位に立つ」姿勢だ。
 目を閉じ、口を軽く開いて「ハー」と静かに息を吐き出す。体の隅々の息を吐き切ってしまうイメージで行う。吐き切ったと感じたら、軽く上体を倒し、最後の息を静かに吐き出す。爪先の息まで吐き出すことを思い浮かべるといい。正式な時間で言えばこれが22秒。

吐き終わったら、上体を前に倒したままの姿勢で、鼻から「スゥー」と静かに息を吸い込む。爪先から脚、腰、下腹、胸と全身に息を送り込むことを思いながら十分に吸い込む。
体中に息が充満したら、上体を起こし、最後に静かに息を吸う。今度は頭に息を吸い入れるイメージである。

この息が充満している状態で5秒ほど臍か下の一点に心をしずめて待つ。その間に、酸素は全身をめぐるのである。これがまた22秒。そして、再び、息を吐き出すところから始める。

これが『藤平式呼吸法』だ。

吐くのも吸うのも自然に、出づる息は出づるに任せ、吸う息は吸うに任せる、という気持ちで行う。

              藤平光一著「言葉の氣力が人を動かす」より