五輪書のあらまし

五輪の書」は、宮本武蔵自身が二天一流について書き残したものである。

生涯六十余度の勝負に一度として敗れたことのなかった宮本武蔵。「五輪の書」は剣の心を最もよく伝える書として評価が高い。

五輪書のあらまし本書は兵法を五つの道に分け、巻を別にしてその道理を知らせるため、地・水・火・風・空の五巻として書きあらわすものである。

1.「地の巻」においては、兵法のみちのあらまし、わが流儀の考え方を説いている。

2.「水の巻」水を手本とし、心を水のようにするのである。水というものは、固定することなく、四角の容器でも丸い容器でもそれに従って形を変え、あるいは一滴となり、あるいは大海ともなる。この水の青々とすんだ清い心をかりて、わが一流のことをこの巻に書き表すのである。

3.「火の巻」この巻には、戦いのことを記す。火は大きくも小さくもなり、きわだった力をもっている。その心になぞらえて戦闘のことを書くのである。

4.「風の巻」この巻では、わが一流のことでなく、世上の兵法について各流派のことを記す。風というのは、むかし風とか、いま風とか、それぞれの家風とかいうからである。世間一般の兵法というものを知らせるために、風の巻として他流のことを記すのである。

5「空の巻」空というからには、始めも終わりもない。道理を体得しては、それにこだわらない。兵法の道は自然の道である。自然と思うがままになって、非常な力量を表すことができる。自然に真実の道に入ることを、空の巻としてかきとめるものである。

神子侃訳「五輪書